Header Biddingをめぐる戦い

Yoshihiko Miyaichi
5 min readApr 15, 2016

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最近、Header Biddingの話があちこちから聞こえてくるようになりました。ちょっとまとめておきます。

Header Bidding

Ad ServerでSSPタグを配信し、SSPが順次Ad Network / Ad Exchange / DSPを呼び出し、決定優先で枠を販売するのをWaterfallと呼びますが、それに代わって、ページが表示される前にオークションを行うのがHeader Bidding。

Waterfallはあらかじめ(予測に基づいて)決めた順番と入札価格で在庫をさばくので、順番が後ろになるほど単価が下がってしまうのと、あらかじめ決めた(予測した)設定がまずいと単価が上がらないという課題があります。

で、いっそページが表示される前にページ全体の広告枠の入札を行ってしまえば、どのAd Exchagne / DSPにも高単価で入札してもらえるし、「アドサーバで配信している純広とも単価を競えるじゃないか」ということから、パブリッシャーのマネタイズ方法として注目されています。

anti-header bidding vs pro-header bidding

パブリッシャーのマネタイズのためという大義名分のもとに喧伝されているHeader Biddingですが、そこには別の力学も働いています。

anti-header bidding

Header Biddingはページの表示前にオークションが行われます。ということは、Ad Serverのタグが呼ばれないこともあるわけで、DFPを普及させ、DFP-GDN-AdExでパブリッシャーを囲い込んでいるGoogleとしては、自身が”中抜き”されるというまったくもって面白くない話だったりします。なので、Googleがanti-header bidding代表。

pro-header bidding

一方、Ad Serverにタグを配信してもらって初めて、在庫の処理が任せてもらえるSSPとしては、最大シェアのDFPがSSPの前にGDN-AdExに在庫を回してしまう状況を苦々しく思っていたわけで、Header Biddingは彼らにとって、やっと主導権を握れるチャンスということだったりします。なので、Rubicon ProjectやPubMaticといったSSPがpro-header bidding代表。

Googleは「Header Biddingはページのレイテンシを起こす」とか言ってたりしますが、それは確かに事実でもあるが、anti-header biddingとしてのバイアスもかかっていると思った方が良いかもしれないということです。

DoubleClick for Publishers First Look

GoogleもHeader Biddingをディスっているだけではまずいと考えて出してきたオルタナティブが”DoubleClick for Publishers First Look”です。これは、Waterfallを排除しつつも、”DFPがHeader Bidding的な動きをする”もので、DFPがserver-to-serverで接続したExchangeにリクエストを投げて入札させ、DFPの支配を維持したまま課題解決しようというものです。

Pros and Cons

  1. Waterfall
    在庫を順につまんでいくので、後ろになるほど、「最低入札単価」が下がり、「優良な在庫」が無くなっていくわけで、全体として単価を上げる力が弱いです。Ad ServerにSSP/Ad Exchangeのタグを入れておくだけなので、実装は簡単です。
  2. Header Bidding
    Ad Serverで配信している純広も含めて、最も単価が高いところに在庫を売れるという意味で、パブリッシャーにとって良いソリューションです。ただ、パブリッシャーサイトのHeaderにアドタグを入れるというのはかなりハードルが高いです。http://prebid.org/といった便利なライブラリもありますが、コンテンツ作成と広告施策が一体化していないのが大手パブリッシャーの現状ですから、「えっHeaderにアドタグ? 無理です!」という反応が目に見えます。
  3. DFP First Look
    DFPを使っているパブリッシャーにとっては、単価上昇が期待できるうえ、DFPの設定を変えるだけで動くわけで、最もハードルが低く、効果も期待できます。でも、「DFP使ってないとダメ」という、日本固有のハードルの高さもあります。

Reference

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Yoshihiko Miyaichi

CEO & President, PIER1. キャリアはSoftware Technology 30年、Media Technology 20年、数年前からRPAを始めました。。思えば遠くに来たもんです。